【日本酒の種類】純米酒や本醸造酒の特徴、甘口・辛口の違いを紹介

日本酒の種類

日本で古くから愛されてきた日本酒は、現在では外国人のファンも多くいる人気の酒。
しかし、「純米酒」「吟醸酒」など、日本酒のラベルにはさまざまな名称がつけられているものの、何が違うのかがわからず、選ぶのが難しいと感じている人もいるのではないでしょうか。

ここでは、国際唎酒師の藤代あゆみさんに、日本酒の種類とそれぞれの特徴、甘口・辛口はどういった味わいを指すのか、さらに日本酒の保存方法について解説していただきます。

監修

藤代あゆみ

藤代あゆみ
国際唎酒師/日本酒学講師/酒匠

2014年にシンガポールで初めて開催された国際唎酒師試験に合格後、日本酒学講師、酒匠(唎酒師の上位資格)、焼酎唎酒師の資格を取得。日本酒を世界に広めるため、20ヵ国以上の人に啓蒙活動をするほか、執筆活動も行う。著書に「日本酒オタクのほろ酔い英語」「推し英語入門」(いずれもアルク)がある。

藤代あゆみ 公式サイト

日本酒とは?

日本酒とは、米を原料とした酒のことで、「清酒」とも呼ばれます。
一口に日本酒といっても、原料や精米歩合(※)の違いなどによって細かく分類されています。

種類によって味わいや風味の特徴も変わってくるため、その傾向を知っておくと、自分好みの日本酒を探したり、飲んだことのない日本酒の味をイメージしたりするのに役立ちますよ。

※精米歩合…精米の際に残った米の割合を表すもの。

精米歩合で味わいは変わる

日本酒の味わいを左右するポイントのひとつが、米の精米歩合です。

精米とは、もみ殻を取った玄米から糠(ぬか)を取り除くことで、私たちが普段食べている白米の精米歩合は90%程。
対して日本酒は、それよりも削った米を使うことがほとんどです。

精米歩合の数字が小さい程(米を削ってあればある程)、雑味のないすっきりとした味わいになると覚えておくといいでしょう。
精米歩合はラベルに書いてあることも多いので、選ぶときの参考にしてみてください。

おちょこに日本酒を注ぐ

日本酒は大きく2つに分類される

日本酒は大きく、「特定名称酒」「普通酒」に分かれます。

特定名称酒と分類されるのは、原料(特に米の等級)をはじめ、所定の要件を満たしたもののみを指し、それ以外はすべて普通酒。
近年、日本国内で流通しているものの6割以上は普通酒(※)となっています。

※参考:農林水産省「令和6年 日本酒をめぐる状況

特定名称酒とは

特定名称酒は、大きく「純米グループ」と「本醸造グループ」の2つに分けられます。

特定名称酒の種類

特定名称酒の種類

日本酒の原料は、種類を問わず米と米麹が必須ですが、純米グループと本醸造グループの大きな違いは、醸造アルコールが使われているかどうかにあります。

本醸造グループの酒に使われる醸造アルコールとは、主にサトウキビなどを原料とし、それを発酵させて蒸留した純度の高いアルコールのこと。
醸造アルコールを加えることで、すっきりとした味わいになるだけでなく、香りも華やかになります。

本醸造グループの日本酒は飲みやすく感じる人も多いため、日本酒初心者におすすめです。

一方、米と米麹のみで造られている純米グループの日本酒は、米本来のふくよかな風味やコクを感じることができ、使っている米の品種や麹の種類によっても味わいが変わってきます。

普通酒とは

一方、普通酒というと、品質が劣るようなイメージを持つ人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。

普通酒はワインで例えると、よくレストランにある「ハウスワイン」のようなもの。
スーパーやコンビニなどで販売されているので手に入りやすく、どんな料理とも合わせやすいのが特徴です。

また、普通酒の中には、ラベルに「特撰」「上撰」「佳撰」のようなランクが書かれているものがありますが、そういったランクや呼称はメーカーが独自につけているもので、統一の基準はありません。

メーカーによっては、特定名称酒に匹敵するクオリティのものを普通酒として販売しているケースも。
リーズナブルな価格も普通酒の魅力ですので、日常的に飲むものとして楽しんでください。

日本酒の生酒・生詰酒・生貯蔵酒とはどういうもの?

日本酒は米を発酵させて造っているため、「火入れ」という低温加熱殺菌の工程を行って発酵をストップさせます。

火入れをすることで発酵が止まるのと同時に、殺菌効果もあるため、日本酒の味わいを一定に保つことが可能です。
通常の日本酒では、貯蔵前と出荷前の2回、火入れを行います。

しかし、日本酒の中には、火入れをまったく行わない、あるいは一度しか火入れを行わないものも。
火入れの有無やタイミングによって、「生酒」「生詰酒」「生貯蔵酒」と名称が変わります。

生酒・生詰酒・生貯蔵酒の違い

火入れ回数 味の特徴
生酒 なし フレッシュでみずみずしい味わい
生詰酒 1回(貯蔵前) ひやおろしとして楽しむことが多い
生貯蔵酒 1回(出荷前) 生酒同様のフレッシュ感があり、保管しやすい

生酒(きざけ/なまざけ/なましゅ)

製造から出荷までのあいだに一度も火入れを行わない日本酒を「生酒」といいます。
読み方は「きざけ」「なまざけ」「なましゅ」とありますが、いずれも間違いではないそう。

生酒は「しぼりたて」と呼ばれることもあるほか、近年は火入れをしていないことをアピールする目的で、「生生(なまなま)」と表記しているものもあります。

生酒は火入れをしていないため、米のふくよかさが感じられ、フレッシュな味わいを楽しめるのが魅力。
飲みやすく、日本酒を飲み慣れない人にもおすすめです。

なお、火入れをしていない生酒は瓶に詰められてからも発酵が進み、味わいや品質が変わりやすいので保存には注意が必要。
購入したら冷蔵庫に立てた状態で保存し、開封後はなるべく早く飲みきってください。

生詰酒(なまづめしゅ)

貯蔵する前に一度火入れを行い、出荷前には火入れを行わない日本酒が「生詰酒(なまづめしゅ)」です。

日本酒好きな方の中には、秋に出回る「ひやおろし」を楽しみにしている人も多いのでは?
ひやおろしとは、春に絞った酒に一度だけ火入れをし、夏のあいだに熟成させて秋に出荷する日本酒です。

2度目の火入れを行わないため、生酒のようなフレッシュな味わいが残りつつも、まろやかな口当たりになっているのが特徴。

ひやおろしはほかにも、「秋晴れ」や「秋あがり」と呼ばれることがあります。

生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)

生のまま貯蔵し、出荷の前に一度火入れをした日本酒を「生貯蔵酒」といいます。

貯蔵前か、出荷前かの違いはありますが、一度だけ火入れを行うという意味では生詰と同様で、味わいも生酒のフレッシュさがありつつ、保管がしやすい点が魅力です。

日本酒の一升瓶

日本酒の甘口・辛口とは?

日本酒の味わいを示す表現である「甘口」「辛口」は、アルコール度数ではなく、「日本酒度」と呼ばれる糖分の比重が判断基準のひとつとなっています。

普通の水を基準とした場合、日本酒に含まれる糖分が多ければ多いほど液体自体は重くなります。
比重が大きいものは、日本酒度では「−(マイナス)」の値となるため、水より重い日本酒は「−(マイナス)=甘口」、水より軽い日本酒は「+(プラス)=辛口」と判断されます。

とはいえ、甘口は砂糖のような甘さを感じるわけではなく、飲んだ後に若干口に残る感覚があるといった感じでしょうか。
反対に、辛口はキリッと締まった味わいで、喉越しがいいのが特徴です。

しかし、最終的な甘口・辛口の感じ方は人それぞれ。
合わせる料理によっても味の感じ方が異なるほか、酒蔵によっても味の表現は異なるため、商品の紹介文を参考にして選んでみてください。

日本酒の風味を落とさずに保存するには?

日本酒には、基本的に賞味期限はないものの、自宅で保管している日本酒は半年~1年以内に飲むことをおすすめします。

常温でも保存できますが、光(紫外線)の影響を受けないように新聞紙や布などで包み、冷暗所に立てた状態で置いて保存するのが◎。

ただし、一度開封したら冷蔵庫で保存するようにしてください。
なるべく早く飲みきるようにするのが理想ですが、時間が経って少し味が落ちたと思ったら、熱燗やぬる燗にして飲むと香りが戻ってくるのでおすすめ。
暑い時期は、氷を入れてロックにしたり、レモンを数滴垂らしたりすると、さわやかな味わいを楽しむことができますよ。

なお、生酒、生詰、生貯蔵といった「生」がつく日本酒は、火入れしていない分、温度などの影響によって味わいが変化しやすいため、未開封でも冷蔵庫での保存がマストです。
この場合も、新聞紙などで包んで光から守るようにしてください。

めいぶつチョイスで、自分好みの日本酒を見つけよう!

日本酒は、種類や造り方によって味わいが異なることはもちろん、その季節にしか味わえないものがあることもわかりました。

精米歩合や火入れ、日本酒度など専門用語も多く登場しましたが、藤代さんによると、大まかな味の傾向をイメージするコツは、「純米」か「純米じゃないか」と、精米歩合を見ることだそう。
そのポイントさえ意識すればいいと思うと、日本酒選びも気楽になりますよね。

全国の名産品を取り揃えているめいぶつチョイスでは、各地の酒蔵で造られた日本酒をお届けします。
ぜひ藤代さんの解説を参考に、お好みの日本酒を探してみてください!